ある時、冗談めかして私のことを「ウチの身内みたいだな」とおっしゃってくださった際は、最高の褒め言葉だと感じ、とても嬉しく思ったことをよく覚えています。
そのお客さまとはとても長いお付き合いのようですね。
社長に就任されて1年経ったころ、そのお客さまから1本の電話がありました。
「いやあ、まいった。病気で入院することになっちゃってよ……。俺、メットライフ生命の医療保険に入っているよな。まず、木戸口さんに知らせようと思って」
お話を伺いながら、担当の私に、真っ先にご連絡いただいたことを誇らしく思いながらも、いつも元気なお客さまがご病気で入院されるとは、とても信じられない思いでした。とにかく給付金のご説明をしなければと病院へ駆け付け、お客さまと奥さまにお会いして直接お話しさせていただきました。何度もお見舞いに伺いましたが、闘病中であっても、いつもの笑顔は決して失われていませんでした。男気あって優しい、私がよく知るお客さまのままでした。
それから、入退院を繰り返すようになり、一時は回復に向かったのですが、半年を経過する頃に容体が急変。そのまま旅立たれました。
あまりにも突然のことだったので、大きなショックを受けるとともに、何の恩返しもできていないのにと深く悔やみながら葬儀に参列しました。お亡くなりになる1ヵ月くらい前、「俺に何かあったら、家内を頼むな。家内は保険のこと何もわからんから……」とおっしゃっていたので、葬儀が終わってから、ご自宅に焼香に伺いました。そこで奥さまに保険金の請求に関してご説明させていただいたのですが、当社以外にもご契約があるようでした。
奥さまは保険金請求の方法がよくわからないということだったため、「私で良ければお手伝いします」と、何度かご自宅にお伺いしました。四十九日が過ぎたころ、無事に全ての保険金のお受け取りが終わりました。最後のごあいさつをして失礼しようとした時、奥さまがタンスの奥から1本のネクタイを持ってこられました。どこか見覚えのあるネクタイでした。
「主人の一番のお気に入りだったの。ここぞというときに必ずしていたネクタイ。これを木戸口さんに持っていてほしいと思って……。木戸口さんもぜひお仕事でここぞのときにしてあげて……」
私は、その場で号泣しました。
それから月日は経ちましたが、今でもここぞのときは、このネクタイをして「全力でお客さまの人生を支えたい」という初心に立ち返り、気を引き締めるようにしています。それに、このネクタイをしていると、お客さまのことを思い出し心強い気持ちになります。これからも、私のことを見守っていただきたいと思っています。