メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.9.29この記事の所要時間:約9分

サーフィンは何歳になっても始められる

ああ、やっぱりいつかはサーフィンやりたかったな。もう身体も動かないから無理だけど……と落ち込んでいらっしゃる方。あきらめるにはまだ早いと言えそうです。日本のサーフィン界の第一人者であるドジ井坂さん(以下ドジさん)は「サーフィンは経験がなくても、何歳になっても始められるよ。ただ、年齢を重ねてからのスポーツは体力任せじゃダメ。正しい体の使い方を学んで賢く安全に遊ぼうよ」と呼びかけます。

日本サーフィン界の黎明期からプロサーファーとして活躍し、70歳を目前とした今なお、自らを「海おやじ」と称してビーチカルチャーの発信に努めているドジさん。懐かしのテレビ番組『オールナイトフジ』サーフィン情報コーナーのハチャメチャな出演者として記憶されている方もいるかもしれません。近年では「一般社団法人ビーチクラブ全国ネットワーク」(以下ビーチクラブ)を主催しており、各地の海岸を利用して「海で楽しく安全に遊ぶ方法」や「身体の使い方のコツ」などを、子どもからシルバー世代まで、幅広い層に向けて伝えています。

21世紀のスポーツは「頑張らない」「体力にモノを言わせない」
進化した道具と自然の力を借りて、年齢にとらわれずに楽しもう!

中高生時代の部活動に始まり、スポーツというと、ハードな練習に迫られ必死で頑張らなければいけないものというイメージが付いて回ります。しかしドジさんは、「今は道具がいい時代だから、そんなに頑張らなくていいんだよ」とちょっとおどけた表情で話します。

ドジさんの解釈では、20世紀は“古い道具の時代”です。ラケットも船もサーフボードも木材などで作られていました。しかし、20世紀後半から21世紀にかけて素材の開発や力学的な研究が進み、道具は軽量で丈夫であることが当たり前になりました。つまり、21世紀は“道具を操作するための力がいらない時代”といえます。例えば、ゴルフでもクラブが球に当たりさえすれば飛ぶようになり、ずば抜けて上手ではないアマチュアでも、スコア100切りが現実的な目標値となりました。また、道具が傷みにくいため、新しいスポーツを始めようと思ったときも道具はすべてレンタルで事足ります。

ドジさんは、スポーツ分類の新しい枠組みとして「アーススポーツ」を提唱しています。ドジさんの見解では、マリンスポーツ全般、スキー、スノーボード、カイト、パラグライダー、スケートボードなど、道具と自然の力を使うスポーツはすべて「アーススポーツ」に含まれるそうです。

「地球のエネルギーを使って人間が進化する。今よりもっと人間が鳥に近づいてみたり、魚に近づいてみたりね。これは人間だけの特権なんだよ」と笑うドジさん。高い空を、広い海を目指す「アーススポーツ」は、もう届かないとあきらめかけていた場所まで、私たちを連れて行ってくれることでしょう。

 

アーススポーツのひとつであるスノーボードを楽しむ人

地球のエネルギーと道具の力を利用するアーススポーツは、年齢にとらわれず楽しめる。
スノーボードもそのひとつ
 

体力や筋力を酷使する必要がない「アーススポーツ」は、生涯続けられるライフスポーツたり得ます。しかし、いくら道具が良くなったとはいえ、初めてチャレンジする方はそれなりの準備を整える必要があります。プロ・アマチュアを問わず数多くのサーファーを指導してきたドジさんは「根っからのサーファーは冬でも海に入るけど、本当に気持ちが良いのは5月から11月ごろ。冬の間は陸で基礎バランスをやって、『いけるな!』と思ったら夏に海に出るのがいいね」と話します。

有料のサーフィンスクールも多々ありますが、ちょっとハードルが高いと感じる方はドジさんが毎月各地で主催しているビーチクラブへ出かけてみては。サーフィンのみならず、海や砂浜で遊ぶコツや身体を見直すトレーニング、海岸避難訓練など、海で遊ぶための秘訣が盛りだくさんです。子どもから高齢の方まで参加者の世代も幅広く、初めて参加する方でも遠慮なく楽しむことができ、マリンスポーツの入り口にはもってこいです。

せっかくなら早く海に出たいし、陸上での準備は遠回りだなと感じるかもしれませんが、ドジさんいわく「スポーツの事前トレーニングは車の教習所と同じ」なんだとか。

車を運転する場合は、いきなり公道には出ず1ヶ月以上教習所に通います。安全に車を運転するために、操作方法やハンドルを切るタイミング、交通ルールやマナーなどなど、時間をかけて必要なことを身に付けてから、やっと道路で走ることが許されますよね。

例えば、サーフィンは平行移動に加え上下移動がある分、車よりも飛行機と感覚が似ているそうです。飛行機は機体の前方を上に向けるとあおられて失速します。サーフィンも同じで、ボードの前は上げずに下げる。下向きに突っ込むような感覚が怖いかもしれませんが、事前に知識を得て陸上練習で感覚をつかんでおけば、怖がらずにスムーズに乗れるようになるのだとか。

ドジさんのお話によると、現代においてスポーツを楽しみたいのであれば、科学的な裏付けを基にまず学ぶことが近道です。体力の低下が気になるミドル世代は新たなスポーツを始めることにためらいがちですが、ドジさんは「体力任せでがむしゃらに『頑張る』のではなく、知識を得て感覚をつかめばいろいろな遊びが楽しめるんだよ。そう考えると、アーススポーツは年齢を重ねた人に向いてるよね」と背中を押してくれました。

体はロボット? 自分自身を“操縦”する感覚を持とう——フィジカル・センス・トレーニング

「自分の体がロボットのようなものだと考えたことはある?」

ドジさんの突飛な質問の真意は、「自分の体を自分が操縦しているという感覚を持ったことがあるか?」ということなのです。ドジさんが見てきたケースでは、最近体が動かなくなった、運動しにくいと感じている方の多くは、関節の動かし方や体重のかけ方を意識していないため、体を正しく使えていないそう。どうやら年齢ばかりの問題ではないようです。

例えば腰が重い、猫背だという方。まっすぐ立ったときに「足の甲あたり」に体重が乗っていませんか? この重心を少しかかと方向へずらし「足の付け根あたり」に体重を乗せるようにすると、自然に腰が引けて正しい姿勢になれるそう。やってみると、確かに格好良く立てるようになります。この「足の付け根あたり」を軸にしてバランスを取ることがどんなスポーツでも基本になるのだとか。

ドジさんは、このような身体の使い方メソッドの数々を「フィジカル・センス・トレーニング」として提唱し、ビーチクラブや自治体のイベントを通じて多くの方に伝えています。自転車がこげず、足も上がらないからうまく歩けない。そのような悩みを持ったシルバー世代のみなさんとこのトレーニングを行うと、姿勢が良くなり驚くほど体がスムーズに動くようになることが多いのだとか。ドジさんは嬉しそうに話します。「元気に歩けるようになると表情も明るくなっちゃうよね。実はこれ、サーフィンのトレーニングが基本になってるんですよと教えたら、じゃあサーフィンもやりたいと言われるんだ。だからいくつになっても、みんなサーフィンにチャレンジするんだよ。もちろんしっかり準備してからね」。

年齢を重ねたら自分の体に負担をかけない〝高度な操縦〟を身に付けるトレーニングが必要になります。「武術でも『師範』と呼ばれる方たちはシルバー世代だったりするでしょ。体力ではなく知力や経験を生かす運動や遊び方をすればいいんだよ」とドジさん。

新たな挑戦の最初には、頭を使ってシミュレーションし、自分自身と向き合い、体のバランスを整えるといった準備が大切になるんですね。正しい姿勢で胸を張って気持ち良く歩くのか、どうせダメだからとうつむいて歩くのか。ささいだと感じることに意識を向けて変えるだけで、体のコンディションも気分も大きく上向きます。

スポーツは“極めない”でいい。幅広く“たしなむ”

スポーツは“極めよう”とせず、幅広く“たしなむ”くらいがちょうどいいというドジさん。

それまでサーフィン一筋だったドジさんが「サーフィンだけではなく、種目を超えていろいろなスポーツに取り組まなくちゃいけない」と考え方を変えたのは、1970年頃、最初にハワイを訪れたことがきっかけでした。

「サーフィンを極めよう」と意気込んで乗り込んだものの、早朝から3階建てほどの高さの波で2時間もサーフィンをすると、もう体力的にも精一杯。しかし、地元の人たちと遊ぶと、彼らはまず早朝からサーフィンをして朝ご飯を食べたらビーチバレー。午後になると、来週アウトリガーカヌーのレースがあるからパドルをやろうか? となり、その後はまた波がいいからサーフィンを始める。その姿を目にした若き日のドジさんは舌を巻き、「こんな人たちと1種目で戦っても負けるわけだ」と実感したのだとか。

また、「サーフィンに限らず、いろいろな遊びを柔軟に楽しめるからこそ、ハワイがリゾート地として発展したのだ」という気付きも得たそう。海に行っても風がずっとあるわけじゃない、波がずっとあるわけじゃない。コンディションによって遊び方を変えることが、海辺の1日を有効に過ごすための秘訣です。かたくなにその種目しかやらない、できないと決めてしまうと、心から楽しめない上、強引に海に入って安全面がおろそかになるといった問題も生じます。

「マリンスポーツに限らず、年齢を重ねた方こそさまざまなスポーツにチャレンジして欲しい」と考えているドジさん。サーフィンの第一人者として走り続けているご自身も、冬はスノーボード、春秋はスカイスポーツ、今後はヨガとのコラボレーションも検討中と、多種多彩な活動を展開しています。

特に、サーフィンを始め、スノ−ボードやスケートボードなど、いわゆる“横乗り”系と呼ばれるスポーツは、体の使い方(顔を正面に向け、体は腰からをねじる)が共通しているため応用力が高い。

ドジさんによると、棒を腰に付ける姿勢作りのトレーニングをすると、多くのお年寄りがスケートボードに乗れるようになるそう。陸でスケートボードができるということは、海ならサーフィン、雪山ならスノーボードをするための基礎が身に付いたということになります。

「ね、難しくないでしょ。歳なんか気にしないで何でもやってみればいいよ」と豪快に笑うドジさん。「ただ、スポーツを始めるとなると、真面目なミドルエイジからお年寄り世代は、これから極めます、頑張りますと言うんですよ。そんなことはしなくていいの。ちょっとやってみて、もし面白かったら続けてみようかな、くらいが一番楽しいし上達するんだよ」

チャレンジしたい気持ちを大切にして、どんどんやってみよう

とりわけサーフィンを始めとするアーススポーツは、経験がまったくなくても、年齢に不安を感じていても、チャレンジしたい気持ちとしっかりした準備があれば、何歳からでもスタートを切ることができます。

海遊びやアーススポーツを安全に楽しみ、自分の身体を見直すきっかけとしてドジさんが勧めているビーチクラブは、毎月第3土曜日に全国の海岸で開催しています。「海に行けば毎回見知った顔がいる、気軽な仲間ができるのもいいですよ。ぜひ遊びに来てうまく利用して欲しい。今は仕事でも体を使う機会が減ってるよね。だからこそ、休みの日には広い海辺で自由に体を動かすと気持ちがいいんじゃないかな。ちょっとやってみて、もし嫌だったらやめればいいんだから(笑)。サーフィンに限らず気になったら何でも試してみようよ」とドジさん。

 

気軽な仲間と一緒にサーフィンを楽しむ

がむしゃらに頑張ることなく、まずは「ちょっと試してみる」くらいが楽しい
 

極める、習得すると考えると二の足を踏みがちなスポーツですが、たしなむ程度でいいのであれば踏み出す一歩も軽やか。さらには、サーフィンをやろうか、SUP(スタンドアップパドル)も気になる、スキーもいいけどスノーボードにチャレンジしようかな?と、思い描くだけでも楽しく日々の暮らしに張り合いが生まれるというものです。あれも、これもと欲張ってたしなむ先に、老後もずっと続けたくなる“一生モノ”のスポーツとの出会いが待っているかもしれません。

<ドジ井坂さん プロフィール>
ドジ井坂(どじいさか)
一般社団法人 ビーチクラブ全国ネットワーク(http://www.beachclub.jp/) 理事長 /Beachschool.com 主宰 / 株式会社 海十山商品研究所 取締役

1948年生。プロサーファーとして世界中の海を巡り、サーフィン競技引退後はフジテレビ『オールナイトフジ』やFM横浜などにレギュラー出演。「湘南ひらつかビーチパーク」(現「湘南ベルマーレひらつかビーチパーク」)の開設などにも携わり、現在はビーチクラブの活動を通じて、幅広い世代にビーチカルチャーの楽しみ方を伝え、身体を正しく使うためのトレーニングなどを行う。ビーチクラブ支部設立や講座開催の相談も随時受け付けている。
 

 

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Posted: September 29, 2017