メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.1.19

 

老後のライフプランは、健康寿命とそれ以降に分けて考える

「人生100年時代」と言われ、超長寿社会を迎えている日本。従来のライフプランとは異なった設計を立てる時代になりつつあります。
定年後はどのような意識を持ってキャリアを積んでいけばよいのでしょう? そのために今からできることは何でしょう?
その点をファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに教えていただきます。

 

ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん

 

ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん

老後のキャリアプランに関しては、気に留めておくとよいことがいくつかあると、畠中さんは言います。

「日本では年金支給開始年齢が原則として65歳からになりました。年金の支給開始年齢が引き上げられることについて、国が悪い、制度がおかしいと責める人がいますが、そう言ったところで現実は何も変わらないんですよね。現状に合わせて、自分の生き方や考え方を変えていく方が建設的です。世界的にも年金支給年齢は65歳以降からという国は多く、日本だけが特別というわけでもないのです。また、老後と一言で言ってしまいますが、大きく分けて2つの期間に分けられます。平均寿命とは別に“健康寿命”という言葉があり、健康寿命とは日常的に医療や介護に依存しない自立した期間のこと。健康寿命以外の期間は、日常生活に制限のある『何らかの介助が必要な期間』。同じ老後でも、この2つは質が違ってきます。
健康寿命の期間は自分の意思でお金を使えますが、健康寿命以外の期間は介護や医療など自分の意思とはかかわりなくお金がかかります。支出の中身が変わるのです」

老後のライフプランは健康寿命とそれ以外に分けて考え、健康寿命が終わった後は赤字にならないようにしておく必要があると、畠中先生は強く言います。

「特に、健康寿命以外のプランはご自身が倒れてからではプランニングできないのが難点。60代になってからでよいのですが、高齢者施設の見学をぜひしてほしいです。自分が払える金額ではどういうところに入れるのかを確認しておきましょう。数が少ないので探すのは大変ですが、介護型のあるケアハウスであれば3食付きで月10万円前後と、年金の範囲で過ごせるところもあります。施設を見もしないで嫌だと言う人は、実際、倒れたときに大騒ぎになることが多いもの。確認したけれど共同生活は嫌だというのなら、もちろん住み替えなくてよいのです。自分がどのような選択をしたいのか考えておきましょう。倒れてからでは自分では探しに行けず、結果的に高額な施設に入ることを選ぶことになりかねません」

畠中さんご自身も高齢者施設を見学する前は、他人と一緒の多床室は絶対嫌だと決めていました。ですが、見に行った後、要介護4~5になったら多床室の方が、少しでも人の気配が感じられていいと思い直したそうです。

老後破産とは貯金の少ない人の話ではないと畠中さんは説明します。

「老後破産とは、看取られるときまで貯金がもたない人のこと。貯金が5,000万円あれば老後破産しないわけではなく、そのような人でも年間の赤字が100万円を超えたら、老後破産する可能性はあります。健康寿命を失ってからは赤字が増える可能性があるので、赤字を増やさないための老後生活を考えておくと、老後破産になりづらくなります」

平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約13年あるというデータもあります。働くことができないのに入院や介護でお金がかかる時期を生き抜くためには、医療保険などの保障系の備えも大事です、と畠中さんは言います。

 

平均寿命と健康寿命の差

資料:平均寿命(平成22年)は、厚生労働省「平成22年完全生命表」。健康寿命(平成22年)は、厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」

出典:厚生科学審議会「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」を基に作成

60歳を過ぎたら仕事人生を一度リセット。柔軟に考えよう!

一方、健康寿命の期間はどのようなキャリアプランを立てればよいのかを畠中さんに聞いてみました。

「これからは定年後も働くという時代です。定年後も65歳までは働ける環境が整えられつつあり、働き方の選択肢も増えました。60歳以降は継続雇用で1年ずつ更新する、会社は辞めてアルバイトやパートとして好きな時間に働く、独立起業をするなどがあります。もちろん、働かずに地域の活動やボランティアをするという選択もありです。
どの選択でもよいのですが、大切なのは60歳を過ぎたら仕事人生が一度リセットされ、一個人になるという意識を持つこと。今までの肩書は通用しませんし、何でも自分でやらないといけなくなります。継続雇用の場合、今まで部長だった人が平社員になり、決定権がなくなることでとても働きにくくなるケースもあります。それが嫌であれば、思い切って会社を辞めてアルバイトをするというのも一つの手です」

畠中さんは老後の労働の考え方について続けます。

「65歳まで継続雇用で会社勤めができればいいですが、契約更新されないケースもあります。再就職に相当な時間をかけるよりも、70歳までアルバイトで働く方が経済的に安定することもあります。『週3日4時間ずつのアルバイト』という働き方は、年金をもらえない期間は赤字かもしれません。けれども、65歳を過ぎたら年金をもらいながら適度に働くというスタイルにスムーズに変われます。コツコツと継続することで、周囲の役に立ちながら頼りにされるという精神的なメリットもあります」

60歳以降の人生を上手に切り替えることが大事だと畠中さんは強調します。

「また、独立起業を望む場合は、小さく始めること。仕入れが必要な仕事や、退職金を全部つぎ込むなど、リスクが多いものは避けることが肝要です」

安易な気持ちで起業をすると、それこそ老後破産になりかねないので、よく考えて行動する必要があります。

老後は年収が下がる分、家計をダウンサイジング

60歳を過ぎると年収は下がるため、家計をダウンサイジングする必要が出てきます。その際、どこに気をつけるべきかを聞いてみました。

 

家計のダウンサイジングのイメージ

 

「継続雇用で会社勤めを続けると年収は以前より下がりますが、子どもの教育費や家のローンは払い終わっており、自分たちのためにお金を使え、それほど生活が苦しくない場合も少なくありません。しかし、その調子のまま年金暮らしに入ると、暮らしのダウンサイジングが難しくなることも。
実は、早い内に会社勤めを辞めてアルバイトやパートに切り替え、少しでも年齢が若いうちに収入が減ったケースの方がやりくりを考えられるもの。家計のダウンサイジングはしやすいんです」

働いていても『年金暮らしの練習』というつもりでダウンサイジングに取り組んでいくのがよいとのことです。では、もう働きたくないという場合は、どうしたらよいかを聞いてみました。

「働きたくないという方は、今までの働き方にとらわれているのかもしれません。例えば週5日ではなく、週3日4時間ずつの勤務など、体への負荷が少ない方法にしてみるなど働き方を変えるといいですね。月5万円のアルバイトだからといってむやみに避けず、少しでも社会に関わっていく方が健康寿命を伸ばすためにもよいのです。働かないと家から出ず、TVを見て反応するだけになり、言葉を発する機会も失われます」

認知症を防ぐためにも、人と関わって双方向のやり取りをすることが欠かせないと畠中さんは言います。

「また、老後を迎える前から、コミュニケーション力を高めておくことも大事。いろいろな人とうまくやっていける能力があると仕事も来ますし、若い人との付き合いもスムーズにいき仕事自体もしやすいです」

時代の変化の風を感じ取り、老後は「今までとは違うスタイルで働く」という柔軟な姿勢をもっておくことが経済面、健康面、精神面を良好に保ち、老後を豊かに暮らすことにつながっていくようです。

一方で、収入が減ることに不安を感じる場合もあるでしょう。そうした場合には、個人で入れる年金などで備えておくことで、経済的な不安に一層手厚い備えができます。定額個人年金保険という保険や、年金保険について対面での相談ができるサービスもあります。老後について考える際には、そういったサービスの利用も視野に入れ、様々な方面で可能性を検討しておくと良いでしょう。

 

畠中雅子さん

 

<畠中雅子さんプロフィール>
東京都生まれ。ファイナンシャルプランナー。
大学時代よりフリーライターとして活動し、マネーライターを経てファイナンシャルプランナーになる。ファイナンシャルプランナーの資格取得後、大学院に進学し、生命保険会社の会計システムや、金融制度改革に関する研究に携わる。新聞、雑誌、インターネットなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、個人相談のほか、金融機関へのコンサルティング業務などを行っている。1女2男の母親でもある。著書は『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』(すばる舎)など60冊を超える。

 

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Posted: January 19, 2018