メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2019.9.26この記事の所要時間:約6分

 

運動が健康な体作りに役立つことを否定する人はいないでしょう。またスポーツは体だけでなく、豊かな心の醸成につながるとも言われています。今回、お話を伺ったのは元ラグビー選手の吉田義人さん。日本代表として活躍し、世界選抜チームであるWORLD XV(ワールドフィフティーン) に日本人で唯一3度選ばれたキャリアを持つ、日本ラグビー界の伝説的人物です。

現役引退後は社会人リーグのヘッドコーチ、ディレクター、明治大学ラグビー部監督を歴任。現在はラグビーワールドカップ2019™開催都市特別サポーター(神奈川・横浜)、日本初の7人制ラグビー専門チーム「サムライセブン」代表兼監督を務めるほか、後進を育てるために一般社団法人「日本スポーツ教育アカデミー」を設立し、精力的に活動されています。そんな吉田さんに、これからの生活を豊かにするヒントをお伺いしました。

吉田義人さん

ラグビーは心と体の健全性が求められるスポーツ

吉田さんがラグビーと出会ったのは、秋田県にいた小学3年生のとき。

「ある日、友人の一人が変な形のボールを持ってきましてね。近所のラグビースクールに入ったというんです。その友人話を聞いたのみで、ルールもよくわからないまま遊んでみたところ、日が暮れるのを忘れてしまうほどに面白かった。私は球技が好きだったし、仲間と取っ組み合って相撲をとるのも大好きだったので、そうした要素が融合しているラグビーが性に合ったのでしょう。」

ラグビースクールに入会すると、めきめきと才能を伸ばしていった吉田さん。強豪として知られる秋田工業高校に進学し、明治大学ではキャプテンとして、チームを全国優勝に導きました。学生時代から日本代表選手として活躍し、海外のチームとも数多く対戦。そこで感じたのは、フェアプレーの精神だったと言います。

「どの国の代表でもトップレベルの選手は人間性に優れているものですが、特に欧州のチームと対戦すると、いつもマナーの良さに感心させられました。もともとラグビーはイングランドの名門校で生まれ、教育と密接に結びつきながら発展してきたスポーツ。技を身に付ける以前に、心と体の健全性が求められる競技なのです」

現役時代の吉田義人さん

日本スポーツ教育アカデミーで後進たちのEQ向上に注力

現在、吉田さんが主催し、子どもたちへのスポーツを通じた教育も行なっている一般社団法人日本スポーツ教育アカデミーでは、そうしたラグビーの精神を元にした「スポーツによるEQの開発と発展」を指導方針としています。EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、「心の知能指数」のこと。IQなど従来の知能検査では評価されない、自分自身における感情のコントロールや他者とのコミュニケーション能力を評価できる指標として注目されています。

「ラグビーはチーム競技ですから、最も大切なのはコミュニケーション。例えば自分が最高のパスを送ったと思ったのに、仲間が取れなかったとする。そんなときには、なぜそこにパスを送ったのか、どうして取れなかったのか、を徹底的に話し合います。すると、スピンがかかりすぎていた、キャッチする技術が未熟だったなどの理由を見出すことができ、双方のレベルアップにつながるでしょう」

アカデミーでは単に身体能力や技術を磨くのではなく、コミュニケーションを通して他者の気持ちを理解できるように指導を行なっているそうです。これはEQでいうところの、感情の識別や理解といった概念に当てはまります。また生徒たちそれぞれが自分で目標を立てることを重視しています。生徒が目標達成に向かって努力し続けることで、自分自身で感情をコントロールし、それを上手く利用する能力を身につけることを目的としています。

「たとえ今はスキルが高くなかったとしても、目標を持って一生懸命取り組んでいる人は大人でも子どもでも尊敬される。年齢は関係ありません。私はいつもそうした基準で人と接してきました。同じ志で、同じゴールに向かってきた仲間同士だからこそ信頼関係を築くことができ、絆も深まるのです」

自分自身を磨き、他者の気持ちを理解できるようになる、つまりEQを限りなく高められる場所がスポーツなのだと、吉田さんは語りかけます。

吉田義人さん

大切なのは、自身の経験を“継承”していくこと

子どもたちがスポーツを通して得た自信やコミュニケーション能力は、学校を卒業した後の人生でも役立つものに違いありません。

「スポーツ選手などが引退した後の生活をセカンドキャリアというより、“デュアルキャリア”と表現した方がよいと思っています。一度人生をリセットして再スタートする、ではなく、現役時代から引退後の目標を考えて行動する。スポーツ選手にしても社会人にしても、現在の生活を送りながら、次のステージを豊かにするような経験を常に積み上げて、人脈を拡げておくことが必要だと思います」

自身の人生においても、大学卒業後、社会人チームに所属し、働きながらラグビーに励んだ経験など、スポーツ分野だけでなく幅広く活動した経験が今に活かされている、と吉田さんは言います。人生はひと繋がり。切り分けられるものではなく、絶え間なく続いていくものです。身に付けた能力や人脈を財産として、次の人生につなげていく。そうした姿勢はスポーツ選手だけでなく、あらゆる人に求められるものでしょう。

「老後の生活を考えるうえでも、EQは大切です。何歳になっても新しい交流も増やしつつ、信頼関係を築いていく。そして、老後を迎えても、世代を超えてコミュニケーションを絶やさないこと。そうすれば、EQは向上させることができます。また、時代とともに考え方は変わってきますが、自分が生きてきた軌跡は変わらず残ります。そういった自分の経験や知見を人に伝え、相手の話も聞くことができれば、老後の生きがいにもつながると思います」

また、吉田さんは老後のコミュニケーションで大切なことについて、次のように語ります。

「特に大切なのは、経験や人とのネットワークを自分の中で完結させるのでなく、きちんと後進に継承していくことだと考えています。それは人生の先輩としての責任。近年、私の出身地である秋田県の子どもは学力水準が高い(※1)と話題になっています。さまざまな要因が考えられますが、個人的な考えでは、秋田では世代間の交流が盛んなことも一因にあると思うんですよね。親や学校の先生だけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんなど、異なる世代の人と多くの時間を過ごすことが、学力向上にもつながっているのではないかと。私自身もそうした環境で育ちました。先輩たちとのコミュニケーションは楽しく、意欲が湧き、何よりの勉強になるのです」

秋田県は小・中学校ともに学力が全国平均を上回っている 美の国あきたねっと 平成31年度(令和元年度)「全国学力・学習状況調査概要」より

経験を分け与える。そうすることで聞く人にとっては幅広い知識や感性を受け取ることができ、語る人は充足した気持ちになります。自身のEQを高め、年齢を重ねても絶えずコミュニケーションの場を持ち続けることが、豊かな老後につながってきます。

最後に、吉田さんの好きな言葉であり、著書のタイトルにもなった「矜持(きょうじ)」についての思いを伺いました。

「自分自身に勝った人間だけが誇りを持って存在できる。弱い自分に、常に戦いを挑む。強い気持ちを持つことが、人間としての基礎になると思います。私は、そういった矜持も後輩に伝えていきたいです」

自分の歩んできた道に責任と誇りを持ち、次の世代につなげていきたい。吉田さんの言葉には、そんな人生への志があふれていました。

吉田義人さん

<吉田義人さんプロフィール>
1969年秋田県男鹿市生まれ。
秋田工業高校で全国制覇、明治大学でもキャプテンとして大学選手権優勝。19歳で日本代表入り。ワールドカップ出場2回。世界最強フィフティーンである世界選抜に日本人から唯一3度選抜される。オールブラックス戦でのダイビングトライは世界ラグビー史上伝説となる。

大学卒業後は伊勢丹でキャリアを積みながら筑波大学大学院でスポーツ教育を学び修士号を取得。31歳でフランスに渡り日本人初の1部リーグプロラグビー選手となる。現役引退後の2009年、母校・明治大学ラグビー部監督就任。14年ぶりに対抗戦優勝を果たす。2014年7人制ラグビー専門チーム「サムライセブン」を創設し代表兼監督就任。2016年、一般社団法人日本スポーツ教育アカデミー理事長就任。

現在、講演、解説、ラグビークリニック、0歳からのラグビーリトミック、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて多方面にてラグビー普及活動やスポーツを通しての将来の人財育成に力を注ぐ。ラグビーワールドカップ2019™開催都市特別サポーター(神奈川・横浜)。

※1 美の国あきたねっと 平成31年度(令和元年度)「全国学力・学習状況調査概要」

*記載の情報は2019年9月26日時点のものです
*取材対象者のコメント、内容は個人の見解であり、当社の公式見解ではありません。
また、その正確性を当社が保証するものでもありません。

 

 
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