メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.11.24この記事の所要時間:約6分

起業するシニアが増えている。

あなたは何歳まで働きますか? おそらく多くの人が60歳か65歳の定年退職までとお考えのことでしょう。しかし近年、退職後も再び会社勤めをする、もしくは起業し個人事業主となり仕事を続けるシニアの方が増えてきています。起業家の年齢を見てみても、60歳を過ぎてから起業するシニアの割合は全体の35%で、この数値は30年前に比べ3倍以上に増えています。

 

起業家の年齢別構成の推移

 

出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書(第2部 中小企業のライフサイクル  第1章 起業・創業 第2-1-3図)」を基に作成

その起因となった背景は様々あります。その一つがお金です。当然退職後はどこからもお給料はもらえません。年金制度はありますが、その受給に関して不安を覚える人は少なくないでしょう。

また、もう一つの理由が昨今の60歳代の若々しさです。30年前は60歳代といえば、まさに“老後”と呼称されるような世代でしたが、当時のそれと比べると、現在の60歳代はまだまだ働き盛りと言えるでしょう。「若いもんにはまだまだ負けない!」そんな台詞を映画や小説の世界ではなく現実の世界で、強がりなどではなく、ごく自然に口にできるシニアの方が増えてきているのではないでしょうか。

今回取材させていただき、ご紹介する方も非常にはつらつさを感じさせる若々しい方でした。村上敏夫さん。65歳。大学卒業後から40年以上、日本郵船株式会社にお勤めになり、今年定年退職されたばかりでしたが、現在は事業を起こし、物流コンサルタントとして働いていらっしゃいます。

仕事復帰のきっかけは「曜日感覚」がなくなってきたから

村上さんは以前の企業では部長や支社の役員までお務めになり、その傍らで日本物流団体連合会の事務局長までご兼任されていました。また、2020年の東京オリンピックに関しても物流問題の検討会などにも携わられていました。まさにそのサラリーマン人生を賭して日本の物流を支えた人物のお一人でしたが、60歳の時に同社をセミリタイア。関係会社の役員・顧問として働かれていましたが、この6月にご退職されました。

実は村上さんはこの時点で、定年退職後も自ら起業して働き続けるなんてみじんも思っていませんでした。「働くの嫌いだから。のんびりしたかった」と笑いながらおっしゃっていました。現在働いている世代の方々で同じように思っている方は特に多いのではないでしょうか。実際、村上さんも退職後は肩の荷を下ろし、とことん遊ぶつもりだったそうです。

ですが、いざその立場になってみると・・・・・・。6月にご退職され、趣味のサッカー観戦や映画鑑賞を心ゆくまで楽しんでいた村上さんですが、「7月にはもう飽きちゃったんだよね」と、笑います。「映画なんか、昨日も今日も観て・・・・・・。明日は何を観ようか・・・・・・、なんてことになってくると、逆に全然楽しめなくなってきたりして」と、当時を振り返り語ってくれました。
日々の多くの時間を費やせるような趣味をお持ちだった場合は違っていたかもしれませんが、そうではなかったとのことです。そして日々単調な暮らしを送る中で、段々と曜日の感覚がなくなっていったことで、「このままではダメだ」と、一念発起。8月、9月と、2ヵ月間ご準備され、10月から物流コンサルタントの事業として屋号を獲得し、正式に始動。現在は2社と業務委託契約を交わされているそうです。

村上さんの場合、金銭的な事情ではなく、有り余る若々しさと「ただ遊んでいても楽しくない」という意外な理由をきっかけに起業されたケースなのです。

起業に必要な自己資金は?

村上さんはオフィスも構えず従業員も雇わず個人で事業を行われているので、起業資金はほぼ0円。税務署に青色申告の承認書を提出しただけだそうです。昨今ではパソコン一台あれば起業できる時代なので、資金をかけずに起業する人もいらっしゃるようです。その場合、重要となってくるのが人脈や現役時代に培った経験やスキル。村上さんの現在のお仕事相手もかつてご縁のあった企業からお声をかけていただいたとのことです。

しかし、やはり村上さんのように自己資金を一切かけずに顧客を獲得し、利益にまで結び付けられるのはかなりまれなケースのようです。日本政策金融公庫の調査によると、シニア起業家が起業資金として準備した金額で最も多かったのは「250万円未満」(41.9%)、そしてその次に多かった回答はなんと「1,000万円以上」(23.7%)、平均では605万円という結果でした。

 

シニア起業家が開業時に準備した自己資金

 

出典:日本政策金融公庫 総合研究所「シニア起業家の開業~2012年度「新規開業実態調査」から~(図-14)」を基に作成

独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2013』によると、ビジネスパーソンの生涯獲得賃金は平均で2億~2億5000万円程度と言われています。こう聞くと非常に多く感じられるかもしれませんが、大卒から43年間フルに働いての数値と考えると、年間に換算するとおよそ465万〜581万円。年収という意味では、ごく身近な数字に聞こえてきます。

この中から生活費や子どもの養育費、住宅ローンなどを差し引いたとして、果たして年間いくらを貯金すれば43年後、起業に十分なほどの貯金を残しておくことができるのでしょうか。

村上さんも「30代~50代を振り返って後悔していることは?」という質問に対して、「もう少しお金のことを勉強しておけばよかった」と答えられました。
例えば確定申告。フリーランスや自営業の場合、仕事で使った経費を申告することで所得から差し引かれ還付金が戻ってきます。筆者である私もそうですがフリーランスや自営業の我々にとっては毎年当たり前のように行っている、そういった確定申告の仕組みについて、村上さんはこれまで全く知らなかったそう。実際、会社勤めのサラリーマンでも副収入がある場合や仕事の経費を自費で払った場合、住宅ローンを組んだ場合等々、条件が合えば確定申告をすることで控除を受けられる可能性が多々あります。
そして保険に関しても、新卒入社時に会社に勧められて入ったものから特に見直さずにこれまで来たそうです。「40年以上払ってきたけどもっと老後に受け取れるお金が増えるような保険商品があったんじゃないかな」と、まさに後悔先に立たず。退職して自ら税理士とやりとりをするようになって初めて様々なお金の仕組みを知り、「随分無駄なお金を払ってきたな」と後悔されたそうです。

やはり老後に自由に使えるお金を蓄えるためには、若いうちから“お金のことは自分で考え、行動する”というスタンスでいないと定年後に後悔することにもなりかねません。

起業の理由は収入よりも生きがい。そのためにも健康を意識。

現在の働き方について、「契約しているうち一つは毎週出社してるけど、あとはパソコンでメールチェックするぐらい」と語る村上さん。収入は定年前に比べると激減されたそうですが、「近所にいい雰囲気の喫茶店を見つけたから、そこを作業場にしちゃおうかな、なんて思ってる。サッカーの試合を見ながらでもできるからね。会社に縛れらないのはすごく楽だよ」と、今はとにかくこの状況を楽しんでいらっしゃるご様子です。仕事を続けることで日々の生活にメリハリができるため、前述のような“時間が有り余り過ぎて逆に楽しくない”といった状況に陥ることはなくなりました。一方で、もちろん現役時代に比べて圧倒的にプライベートに費やせる時間が増えたため、お仕事とプライベートのバランスがこれまでにない程にすごくちょうどいいとのことです。ご家族との会話も以前より増えたそう。そんな村上さんの今一番のご趣味はサッカー。65歳にしていまだにご友人とプレーを楽しんでおられるようです。

 

サッカー仲間との写真

 

健康のためにも続ける趣味のサッカー。写真一番右が村上さん。

実は村上さんのように起業の動機として収入を理由としない方は意外と多いのです。以下のグラフをご覧いただくと分かるように、シニアの方に起業の動機を伺ったところ、「収入を増やしたかった」という回答よりも「経験や知識を生かしたかった」や「社会の役に立ちたかった」といった回答の方が明らかに多い結果となっています。

 

年齢別の開業動機

 

出典:日本政策金融公庫 総合研究所「シニア起業家の開業~2012年度「新規開業実態調査」から~(図-10)」を基に作成

少子高齢化により労働人口の減少も気になる昨今、村上さんもまだ起業したばかりですが、働き続けられる限りは働き続けていたいとのことです。そのために今、これまで以上に健康に気を遣っているそうです。また、趣味のサッカーも、体力維持のために続けている側面もあるそうです。
村上さんをはじめとした多くのシニアの方が、定年後にプライベートとのバランスを保ちながら、楽しみながらできる仕事を“生きがい”として楽しんでいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

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Posted: November 24, 2017