メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.10.6この記事の所要時間:約6分

「このところ、なんだか身体が思うように動かない」「集中力が続かない」「気分がふさぐ」……その不調は、「脳疲労」が原因かもしれません。運動や仕事による疲れは、身体ではなく脳に蓄積されるため、回復のカギは“睡眠”にあると語る疲労のスペシャリストに、脳疲労を回復させる睡眠術について聞いてみました。

「うっかりミスが多い」「気分がふさぐ」……その正体は“脳疲労”

「自転車やジョギングなどの日常的な有酸素運動では、筋肉やその末梢神経はほとんどダメージを受けないことが明らかになっています。運動によって心拍数を上げ、呼吸を速め、汗を発生させるのは、脳の司令塔となる自律神経。この自律神経に負荷がかかることで起きる『脳疲労』こそが、日常的に感じる疲れの正体なのです」

こう語るのは、『東京疲労・睡眠クリニック』院長・梶本修身先生。
運動や仕事による疲れは、実は身体ではなく“脳”に蓄積されていく……つまり、疲労は“脳”で起こると話します。

 

“疲労のスペシャリスト”として知られる梶本修身先生

 

“疲労のスペシャリスト”として知られる梶本修身先生。

さらに現代は、長時間のデスクワークによる過度の集中状態やストレス、パソコンやスマホの画面を見ることなども、自律神経の中枢を疲れさせる原因になってしまうとのこと。

「筋肉であれば、筋肉痛というわかりやすい疲労のサインがありますが、自律神経の疲労は自覚しにくく、どんどん蓄積されていきます。その結果、疲労感や意欲減退など、漠然とした身体の不調(不定愁訴)として出現します」と梶本先生。

漠然とした不調は、「発熱」「痛み」と同じく、脳が発する生体アラームのひとつとのこと。

「最近なんとなく疲れやすい」「仕事でうっかりミスが多い」「気分がふさぎがち」など、不調に悩まされることはないでしょうか? それらは脳に疲労が溜まっているサインといえるのかもしれません。

脳疲労が老化を招く

「対策をしなければ、脳疲労はどんどん蓄積され、取り返しのつかない状態になることもある」と、梶本先生は続けます。「自律神経が働くと、酸素を大量に消費し、脳内に活性酸素が発生します。この活性酸素は、自律神経の細胞を攻撃して酸化させ、どんどん“サビ”つかせてしまうのです」

サビつけば回らなくなる自転車のチェーンと同じように、自律神経も機能が落ちてしまう。これが“疲労”の状態だそうです。

さらに梶本先生によれば、「この疲労が慢性化し、“サビ”がこびりついて取れなくなってしまえば、脳の“老化”を招きます。脳の老化は、糖尿病や脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病のリスクを高め、認知症につながる可能性もあります。自律神経は、起きて活動している限り休みなく働きます。放っておけばどんどん蓄積されていく脳疲労は、早いうちに回復させることが大切になります。“サビ”を取って脳の老化を防ぐためには、自律神経をしっかりと休ませる“質の良い睡眠”が重要です」とのこと。

脳疲労を改善させる“質の良い睡眠”とは?

では、“質の良い睡眠”とは、具体的にどういうものでしょうか?

「当日の疲れを翌日まで持ち越さず、回復させるのが“質の良い睡眠”です。寝入りばなの3時間は『睡眠のゴールデンタイム』と呼ばれ、とくに重要な時間帯です。このときに脳の疲れを癒す『深いノンレム睡眠』をしっかりと取ることさえできれば60〜70%程度の疲労回復を実現できます」と梶本先生。

 

寝入りばなの3時間がゴールデンタイム

 

いくら眠っても、翌日の疲労感がぬぐえないという場合は、このゴールデンタイムを逃している可能性があるそうです。

大切なのは、睡眠の量よりも質。そのためには、睡眠のための“準備”をすることが大切だと語ります。

〈1〉自律神経を休ませるための“準備”

深い眠りを誘うには、自律神経を休ませる環境づくりが大切。そのひとつに、体温調節が挙げられます。

梶本先生は、「深い睡眠に誘うには、代謝を抑えるため身体の深部体温(内臓の温度)を下げる必要があります。適切な入浴によって血行を促進させることで、就寝時の深部体温を下げることができます。入浴は、38〜40度の温めのお湯に、5〜10分程度が理想的。浴槽で汗だくになるような入浴は自律神経にさらに負荷をかけてしまうので避けましょう」と大事なポイントを教えてくれました。

 

38〜40℃で5~10分の入浴が理想

 

入浴は、就寝の60分前までに済ませることもポイント。もちろん、寝室の室温にも気を配りたいところです。

続けて、「寝汗をかいている場合、体温調節によって自律神経が働いてしまい、眠りが浅くなります。寒すぎても同様です。とくに夏と冬は、クーラーやヒーターを駆使して常に快適に感じる室温にコントロールしてください」とのこと。

また、室温を整えた後は、照明の明るさも調節する必要があるのだとか。

「夜に明るい光を浴びると、深い睡眠に必要な眠りホルモン『メラトニン』の分泌が抑制され、眠りの質が落ちてしまいます。就寝の60分ほど前からは、明るい光を避けて暖色のライトのなかで過ごしてください」と梶本先生が教えてくれたように、眠る前のスマホやパソコンでの作業も、自律神経を刺激してしまうのでご法度です。夕食後は、照明の明るさを少し落としたり、フットライトなどの間接照明をうまく利用したりするのも良いそうです。カーテンを少し開け、自然な月明かりを入れるのも有効といいます。

〈2〉いびきをかいていないか?

睡眠環境の悪さのほかに、睡眠の質を下げる大きな原因のひとつが、いびきとのことです。

「いびきは、気道が狭くなって酸素の供給が不十分になっている状態を指します。すると、自律神経が心拍を速くし、血圧を上げることで酸素の脳への供給量を維持しようとします。つまり、寝ている間に自律神経がフル稼働している状態。これでは寝ても疲れるばかりで、疲労回復は望めません。さらに、いびきが悪化すると、睡眠障害のひとつである睡眠時無呼吸症候群に陥ることもあります」と注意を呼びかける梶本先生は、とくに気を付けたいのは、女性だといいます。

「いびきといえば男性というイメージがあるかもしれませんが、実はより危険なのは、女性のいびきです。低血圧や貧血を併発している可能性が高く、自律神経への負担がより強い場合があります。とくに更年期の女性の方は注意が必要です」

自分ではいびきをかいていることに気付きにくいため、パートナーに指摘してもらうことも対策となりますね。

〈3〉毎日の睡眠をマネジメントする

良質な睡眠を得るための工夫はさまざま。ですが、睡眠には個人差があるものです。

梶本先生に伺うと、「自分はどのくらい睡眠時間を取れば翌朝に疲れが残らないか、まずは自分のベストな睡眠時間を知ることが第一歩。そのために、簡単な『睡眠日誌』を書き留めることをお勧めします」とのこと。

『睡眠日誌』とは、日々の睡眠時間(就寝時刻、起床時刻)のほか、起床時の疲労感、昨日の行動量、中途覚醒(夜間のトイレなど)の回数を記録する物。自分の睡眠を、客観的に見ることができます。トイレや洗面台に置き、朝のちょっとした時間に気軽に書き込めるようにすると、習慣付けしやすいはず。

「スマホの睡眠アプリもおすすめです。就寝中にいびきをかいているか、どのくらい深い眠りを得ているかなど、自分の睡眠の詳細を知ることができます」と梶本先生は付け加えてくれました。

睡眠に不安がある場合、睡眠クリニックへ受診するのも手です。自律神経の疲労や、普段の睡眠の質の調査、睡眠時無呼吸症候群の診断までが可能とのこと。東京疲労・睡眠クリニックでは、保険診療で2,700円程度の自己負担で検査を受けることができます。

“今”の睡眠を見つめることが、より良い老後につながる

脳疲労の回復には、自律神経の休息が必要不可欠。脳疲労を溜めないためには、良質な睡眠が何よりのクスリということがわかってきたといいます。

 

「良い睡眠で人生は変わる」と語り、おおらかに笑う梶本先生

 

「良い睡眠で人生は変わる」と語り、おおらかに笑う梶本先生。

「梶本先生いわく、「日々の不調をなくし、老化知らずに過ごすためには、まず自分のキャパシティ(能力)を知ることが大切です。自分の活動量の限界や睡眠の特徴や特性を把握し、自分にぴったりな睡眠習慣を見つけてみましょう」

日々の睡眠を見つめ直し、“今”の不調をなくすことが、より豊かな老後を生きることにもつながるのではないでしょうか。今晩から、ぜひ質の良い睡眠法を実践してみてください。

次回は、脳疲労を“予防”する食事法を紹介します。

<梶本修身先生プロフィール>

 

東京睡眠・疲労クリニック院長、梶本先生

 

東京睡眠・疲労クリニック院長。
大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授、大阪大学大学院医学研究科卒業。医学博士・医師。著書に『なぜあなたの疲れはとれないのか?――最新の疲労医学でわかるすっきり習慣36』(ダイヤモンド社)など多数。中でも『すべての疲労は脳が原因』(集英社)はシリーズ化し、累計15万部を突破するベストセラー。

 

 

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Posted: October 6, 2017