メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2017.12.15この記事の所要時間:約5分

 

がんを恐れすぎている日本人

皆さんは、がんという病気についてどのようなイメージを持っていますか?
おそらく、漠然とした怖さを感じている人が多いことでしょう。「余命」「宣告」「副作用」など、がんという病気に付いて回るキーワードは、いやが応にも不安をかき立てます。あるアンケートによると、日本人は諸外国の人と比べて、がんに対する恐怖心が頭一つ抜きん出ているのだそうです。

最大の健康不安要因として挙げられた疾患名と回答者の割合

出典:メットライフ生命協力:ザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる報告書
「リアリティ・チェック:健康・経済プラン・QOLが映し出す未来像と現実のギャップ」参照

グラフを見ると、最大の健康不安要因として「がん」を挙げる人は、日本人回答者の実に61%。2番目に割合の高かった香港を、10%以上も上回る数字となっています。この要因としては、1981年以降、がんが日本人の死因のトップであり続けているため(※)、死に繋がりやすいイメージが強い可能性があります。

しかし、自身ががんを経験し、そうした死に繋がりやすいイメージとは異なる見方をするようになったのが、今回取材させていただいた西口洋平さんです。

西口洋平さん 西口洋平さん

奥さまと小学生の娘さんを持つ西口さんは現在39歳。4年前に突然、胆管がんの告知を受けました。それも、最も進行した状態のステージ4。人材紹介会社の営業職で日々激務をこなしながらも、健康診断では特に問題なかったため、自分が重大な病気になるなどとは、まったく考えていなかったそうです。

がんについての知識がないため不安だらけ

病気発覚のきっかけは、しばらく続いた下痢が気になり、薬をもらうために近所の病院を訪ねたことでした。たぶんストレスからくるものだろう、と初めは軽い気持ちでいたそうですが、症状からは診断がつかず、大きな病院に移って検査を重ねることになり、そこでがんの告知を受けたのです。

順風満帆だった人生に、思ってもみなかったがん宣告。さらに臓器の説明、治療法、手術の必要性、入院生活……、と畳み掛けるように浴びせられる膨大な量の情報を受け止めきれず「まるで他人の話を聞いているようだった」と、西口さんは振り返ります。

実は自分が大きなショックを受けていると気付いたのは、診察室を出て大阪の実家に連絡したときのことでした。受話器の向こうのお母さまに、がん告知を受けたと伝えた瞬間、我知らず涙があふれ出てきてしまったのだそうです。

「診断で聞いたときは“あ、そっか”くらいの気持ちだったのですが、今思えば、自分で口に出してがんだと言うことが、認める、自覚するプロセスだったんだと思います」と語ります。
さらに、自分が『がんについて何も知らない』ということにも、そのとき初めて気付いたそうです。手術がうまくいかなかったらどうなるのか? 抗がん剤治療の副作用は? 仕事はどうすればいいのか? 生活はどうなっていくのか? そして、これから成長していく子どものことは?
押し寄せるのは、ただただ、不安ばかりでした。

がんには「時間」があるという“気付き”

開腹手術を受けるも、がんが腹膜とリンパ節に転移していたため、がんを全て取り除くことは難しく、西口さんは抗がん剤治療を続けていくことになりました。当初は「死への恐怖」や不安など、精神面での落ち込みが激しかったという西口さん。立ち直ることができた理由について伺うと、「一番大きかったのは、時間ですね」と即答されました。

そして「僕が特別なのではなく、他の多くのがん患者さんもスピードの違いはあれど、長くがんと付き合っていく中で徐々に日常へ戻っていっているはずです」と西口さんは語ります。ここから、多くの人々が漠然と抱いている「がん=死」というイメージは実情と異なる場合もあることがわかります。多くの場合、がんは告知されたからといってすぐに死ぬのではなく、告知を受けたショックから立ち直り、日々の生活を取り戻していくという道を歩むことになるのです。

がんになっても、必ずしもすぐに命をなくすわけではない。この“気付き”が、西口さんの生活を大きく変えました。これまでと同じように生活を続けていくため、上司に相談して職場復帰を果たしたこともその一つ。さらに“限られた時間”という意識を強く持つことで、家族とのコミュニケーションも、より意味のあるものに変わったのだそうです。

お子さんとの会話には、“こう育っていってほしい”というしつけの要素が増え、家族で行きたい場所には、すぐに出かけるようになりました。

「やろうと思ったことは、いつかではなく、今やらなければできない。限られた時間を生きているのは健康な人でも同じですが、僕はがんになったからそれに気付けたんです」
いつかいつか……と先延ばしにしている時間はない。今やりたいこと、やるべきことがクリアになったと西口さんは語ります。

やるべきことがクリアになったと語る西口さん やるべきことがクリアになったと語る西口さん

 

患者同士も 周りで支える人たちも コミュニケーションを

がん患者と一口に言ってもそれぞれに事情は異なりますが西口さんの場合、ご自分の体のことと同じくらい悩んだのは、お子さんのことだったそうです。

病気のことを告げた方がいいのか、将来のために何をしてやれるのか……相談しようにも周りに同世代の患者はいませんでした。しかし、必ず自分と同じように悩んでいる人がいるはずだと考えた西口さんは、子を持つがん患者同士がつながるためのSNS「キャンサーペアレンツ」(子どもをもつがん患者同士でつながるためのサイト)を立ち上げました。

「誰かの悩みに、他の誰かが正解を持っている場合もあるだろうし……経験をシェアしあいたいと思ったんです」と立ち上げ当時を振り返る西口さん。病気に関する悩みだけでなく、日々の喜びも分かち合える場所として、登録者は現在3,000人を超えているそうです。

ここで、西口さんに伺ってみました。「周りの人は、がん患者さんにどう接すればいいのでしょう?」。返ってきた答えは「正直に聞くこと」。「がん患者は特別な存在ではなく、病気を抱えながらとはいえごく普通に生活しています。どう接していいかわからない場合は、直接『教えてほしい』と声にしてくれれば患者とのコミュニケーションにつながりますし、この病気への理解を深めることもできます」と話してくれました。

西口さんは、がんになったことで「今」という時間を無駄にしない生き方に気付いたそうですが、それは決して、病気でなければできない生き方ではありません。たとえ現在病気でなくても、限られた時間の中で生きていることは皆同じです。がんをいたずらに怖がることなく、“知って理解する”ことが、「今」を大切に生きることにつながるのではないでしょうか。

※出典:厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況(平成30年)」   

*記載の情報は2017年12月15日時点のものです。
*取材対象者のコメント、内容は個人の見解であり、当社の公式見解ではありません。また、その正確性を当社が保証するものでもありません。

 

 
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