メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.1.5この記事の所要時間:約9分

脳血管疾患の罹患割合が若年化している

「脳梗塞」や「脳卒中」というと、高齢者が発症する病気だと思っている人は多いのではないでしょうか? 確かに患者の多くは、血管の機能が衰える60歳以降に発症しています。しかし近年、30代~50代の比較的若い年齢層に、脳血管疾患を発症する割合が増えてきているそうです。

実は、医療の進歩や健康志向の高まりにより、脳血管疾患の患者の総数自体は減少傾向にあります。厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」を見ると、脳血管疾患による死亡者数は2014年が11万4,207人、2015年が11万1,973人、2016年が10万9,320人と年々減っています。
しかし、30代~40代を見ると2,453人、2,466人、2,454人とほぼ横ばいです。さらに40代に関しては死亡者数が増加しています。

脳血管疾患は“突然に”起こることが特徴です。そして今や高齢者だけでなく、幅広い年代でかかり得る疾患だということを認識しておかなければいけません。

ではなぜ、比較的若い年齢層に脳血管疾患の罹患割合が増えているのでしょうか? 血管病予防・治療の専門家で血管病に関する著書も多数手がけている、新小山市民病院院長の島田和幸先生に、比較的若い年齢層の脳血管疾患についてお聞きしました。

 

島田和幸先生 島田和幸先生

 

脳血管疾患は減っているのに、脳梗塞は増えている

そもそも脳血管疾患とはどのような病気なのでしょうか?

「脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによって脳細胞が障害を受ける病気の総称です。そして、脳血管疾患の中で最もよく知られているのが脳卒中です。脳内の血管が破れる“脳内出血”、脳を覆っている軟膜とその上のくも膜の間で出血する“くも膜下出血”、そして血管が詰まる“脳梗塞”があり、これらをまとめて脳卒中と呼んでいます」

 

脳卒中の分類

 

「全体の患者数が減少傾向にある脳血管疾患の中で、逆に患者数が増えてきているのが脳梗塞です。脳梗塞とは、太い脳動脈が動脈硬化によって狭くなり、血液の固まりである血栓によって血管の内側が詰まってしまい、そこから先に血液が流れなくなくなってしまう病気です。血液が流れなくなった脳細胞は、数時間以内に治療を開始しなければ重大な障害や命に関わる事態を引き起こす危険性が出てきます」

 

脳血管疾患の病類別にみた年次別死亡率 脳血管疾患の病類別にみた年次別死亡率 出典:平成28年度「厚生労働省人口動態統計特殊報告」を基に作成

 

原因は肥満と塩分の取り過ぎ

島田先生は、現代人に脳梗塞が増えた原因は肥満と塩分の取り過ぎ、そしてストレスにあると言います。

「動脈硬化は、加齢に加え、肥満や生活習慣の乱れによって引き起こされます。また、塩分をたくさん摂取すると血液中の水分が増え、血圧が高くなってしまいます。血圧が高いと血管もボロボロになり、血の流れが滞るようになって、血栓ができやすくなります」

現代人の生活習慣は、昔と比べて大きく変わりました。食生活が欧米化したことによって、カロリーを取り過ぎてしまう人が増加。24時間営業のコンビニやファミリーレストラン、手軽に食べられるファーストフードなどで外食する機会も増えました。こうした場での外食が増えると、どうしても栄養は偏りがちです。さらに、交通機関が発達して便利になったことで、運動不足に陥る人も増えました。

島田先生は「これまで脳梗塞は動脈硬化の起こりやすさから高齢者に多い病気とされてきましたが、生活習慣の変化によって、体の変化が始まる30代から発症のリスクが高まってきている」と近年の傾向について、比較的若い世代に向けても警鐘を鳴らしています。

若いからと油断して不摂生な生活を続けている人は、いつ脳梗塞が起こってもおかしくない、と考えておいた方が良さそうです。

 

ストレスが「最後の一撃」に

肥満や塩分の取り過ぎによって脳梗塞のリスクが高まったとしても、発症のタイミングは人それぞれ。
20代で発症する人もいれば、60代を過ぎても発症しない人もいます。島田先生は、「ストレスが発症の原因になることがある」と話します。

「不規則な生活で脳梗塞を発症するかしないかの境目に立っている人にとって、ストレスが“最後の一撃”となり、発症につながることがあります。日常生活でストレスを抱えていると、神経やホルモンのバランスが崩れ、脳卒中を引き起こすことがあるのです。事実、東日本大震災の直後、脳卒中の患者が増加したというデータもあります」

日ごろから不規則な生活をしている自覚のある人は、ストレスが発症への一押しとならないように気をつけましょう。

以下の項目に当てはまる人は要注意です。

 

注意した方が良い項目

 

特に、以下の項目に当てはまる人は注意しましょう。

 

特に注意すべき項目

 

脳梗塞のサインは血圧に表れる

脳梗塞の前触れとして、「手足のしびれ」、「ろれつが回らない」、「言葉が出てこない」という症状があげられます。そのような症状がある人はすぐに検査を受けた方が良いでしょう。

では、自覚症状のない人が自分の体内で脳梗塞のリスクが高まっているかどうかを知るには、どのようにすればいいのでしょうか?

目安となるのは血圧やコレステロールの値です。高血圧を調べる血圧の検査や脂質異常を調べる脂質の検査、高血糖や糖尿病の有無を調べる代謝系の検査などが、脳血管疾患のリスクを見つける重要な手掛かりとなります。

30代や40代といった若い世代も1年に1回は健康診断に行き、自分の体について知ることが好ましいとのことです。加入している保険によっては、健康について気になることを気軽に専門スタッフへ電話相談できるサービスが利用できる場合もあります。もしも健康診断の結果に不安な点があったら、こうしたサービスを利用してみるのも良いでしょう。

健康診断を受けるメリットは他にもあると島田先生は続けます。「脳梗塞のリスクは、心臓に心房細動という不整脈があると高まります。心臓の部屋の中に血栓が生じて、それが脳に運ばれて血管を詰まらせます。こうした心房細動を発見することもできます。」

また最近では、血管の老化の度合いを表す目安となる“血管年齢”という言葉も知られるようになりました。血管年齢が高ければ動脈硬化が進行していることを意味しますし、血管年齢が低ければ動脈硬化はあまり進行していないということになります。

「老化によって固くなった血管を柔らかくすることはできませんが、生活習慣の改善によって血管を鍛えれば、老化のスピードを緩やかにすることはできます。日ごろから血管年齢について意識し、血管を若く保つことができれば、脳梗塞のリスクはグッと減っていきます」

 

野菜中心の「腹八分目」生活で脳梗塞予防を

島田先生は「血管を鍛えるのに大切なのは食事と運動。簡単で効果的な方法は、思い切ってベジタリアンになることです。質素な食生活をしていれば、脳梗塞の心配はありません」と語ります。最近は家庭菜園も人気ですし、野菜中心の食生活が健康に良いことは誰もが知るところでしょう。

「しかし現代人にとって、いきなり野菜だけを食べる生活に変えるのは難しいですよね。そこで“カロリーオーバーにならないこと”と“塩分を控えること”の2つを意識することで、血管を鍛える効果はグンとアップします」

カロリーオーバーにならないためには、当たり前ですが、食べ過ぎないことが大切です。自分の年齢、性別、生活活動強度(※)から必要な1日分の適正総カロリーを知ることが、良い食べ方の第一歩だそうです。

「適正総カロリーに“だいたい近づける”ことを目指せばOK。これがイライラせずに長続きさせることのコツです。あまり難しく考えず、普段から腹八分目を意識することから始めるのがおすすめです」

※生活活動強度(METs)- 身体活動の強度を表す単位で、運動や活動によるエネルギー消費量が安静時のエネルギー消費量の何倍に当たるかを表す指標

 

調味料の特徴を知り、塩分を抑える

普段の食事から塩分を減らす際も、あまり数字にのみこだわり過ぎず、できそうなことから始める のがコツだそうです。島田先生によれば、塩分を減らすには「攻めの方法」と「守りの方法」の2つがあるそうです。「攻めの方法」は体に取り入れる塩分を減らすこと。「守りの方法」は余分に取り入れてしまった塩分を体の外に出してしまうことです。

「攻めの方法」を取り入れる場合、まず気を付けた方がいいものは調味料だそうです。ほんの少しのつもりでも、調味料をかけると摂取塩分がグンと多くなってしまいます。また、カロリーオフの表示などがあり、健康に配慮されている調味料の中にも、塩分が高いものがあります。調味料の特徴を知り、味付けの意識を変えることが大切だそうです。減塩食が味気ないなぁ……と思う人は、酸味・苦み・旨みで補うといいとのことです。

 

塩分を減らすために気をつける食べ物
対策として使うと良い食べ物

 

イモやバナナで余分な塩分を追い出す

食事から摂取する塩分を減らす「守りの方法」は、余分な塩分を追い出してくれるミネラルである「カリウム」を多く含む食材を食べることだそうです。

「生で食べられる野菜や果物は、カリウムをそのまま取り込めるので効率的です。また、成分が凝縮されているプルーンなどのドライフルーツや干したキノコも、カリウムが豊富に含まれています。ジャガイモ、サツマイモなどのイモ類のカリウムは加熱しても失われにくいので、いろいろなメニューが楽しめます」

 

余分な塩分を体の外に出すために食べた方がいい食材

 

血管強化食品とは?

実は、摂取する塩分量をコントロールして高血圧を防ぐ以外にも、血管を鍛える効果が高い「血管強化食品」と呼ばれる食品を食べるのも、脳梗塞予防に効果的な方法だそうです。もちろん、これだけ食べていれば大丈夫、というものではありませんが、バランスの良い食事をとったうえで積極的に食べておきたい食品です。

 

血管強化食品

 

食生活の改善について、島田先生は「無理のし過ぎは禁物。あまり厳密にやり過ぎると続きません。体重が増えないようにする、ということを目安に、ご飯の量を調節するくらいから始めましょう。最近は外食でもカロリーや塩分を表示している企業が増えましたから、その数字を気を付けて見てみるなど、まずはそういった意識をしっかり持つことが大切です」と語ります。

こうした生活習慣を続けると、1ヵ月ほどで血圧やコレステロール値に変化が表れるそうです。無理のない範囲で半年ほど続ければ、脳梗塞のリスクはかなり低くなります。

 

毎日の生活に運動を取り入れる

脳梗塞のリスクが少ない健康的な血管を目指すにあたり、食事と並んで重要な要素が運動です。適度な運動で血流を良くすることで、血管の内皮細胞が活性化され、強い血管が作られるそうです。

「運動も食事同様、毎日の生活の中に無理なく取り入れることが重要です。最も手軽で簡単なのは、ジョギングやウォーキング、そしてストレッチです。太極拳や社交ダンス、ラジオ体操や盆踊りなど、有酸素運動であれば何でも構いません。自分の好きなものをうまく組み合わせて、なるべく毎日体を動かしてください」

自分で目標を定めて、具体的には1回30分以上を目安に毎日運動するのが好ましいとのことです。
本格的な運動はなかなか毎日続かないという人でも、1駅分歩いて帰る、なるべく階段を使うなど、小まめに動こうとするのが長続きするコツだそうです。

最後に、簡単で安全にできる軽いストレッチを教えていただきました。

【島田式ストレッチ① 前部太もも伸ばし】
1.壁の横に背筋を伸ばし、真っすぐ立ちます。
2.右手を壁に当てて体を支え、左手は左足首を持ち、膝を曲げてお尻に向かって引き上げます。
 そのまま20秒間キープします。
3.左右の足を替えて行いましょう。

【島田式ストレッチ② 腰・後ろもも伸ばし】
1.壁の前に背筋を伸ばし、真っすぐ立ちます。
2.右手を壁に当てて体を支え、左手は左太ももを抱えるように胸に向かって引き上げます。
 そのまま20秒間キープします。
3.左右の足を替えて行いましょう。

【島田式ストレッチ③ ふくらはぎ伸ばし】
1.背筋を伸ばして立ちます。
2.左足を後ろに引いて、右膝を曲げて体重を右足に掛けます。
3.右足に両手を置き、左足のふくらはぎを伸ばします。
 そのまま20秒間キープします。
4.左右の足を替えて行いましょう。

また、筋肉を鍛えるためにスクワットをしたり、腕を振って足踏み運動をしたり、指の先をグー・パーするなどの運動も効果的だそうです。

健康な血管作りに王道はありません。地道な努力の積み重ねが血管を鍛え、脳梗塞のリスクを減らします。
血管強化のために、自分のライフスタイルや生活に合った方法で、ぜひ今日から食生活を見直して、簡単な運動を始めてみませんか?

 

島田和幸先生

 

<島田和幸先生プロフィール>
新小山市民病院 院長
血管病の予防・治療を専門とする循環器内科において、臨床と教育に情熱を傾けてきた血管の権威。
脳卒中にも詳しく、病院長を務める新小山市民病院では、心臓疾患から脳卒中まで、治療の陣頭指揮を執ることもある。高血圧治療のガイドラインの作成委員も務め、血管病に関する著書や監修も多数手掛けている。
著書に『10分歩くだけで血管寿命は延びる』(宝島社)、『専門医が教える 高血圧でも長生きする本』(幻冬舎)、『専門医が教える 日本一おいしい減塩レシピ』(TJMOOK)。共著・監修多数。

 

 

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Posted: January 5, 2018