人生100年時代、介護にかかるお金や心構えとは

FP井戸さんに聞く 知っておきたい介護のこと

メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2020.09.10この記事の所要時間:約5分

 

明るく乗り越えたい介護問題。準備しておくべきこととは?

人生100年時代。親の、そして自分の老後で発生するであろう介護に不安を感じている人も多いでしょう。
しかし、実際は突然介護が必要になることは少なく、少しずつメッセージを出していることが多いものです。身近な方の小さな変化に気が付くためにも、介護を意識しておくことで、老後を少しでも明るいものにしたいと思いませんか。
実際、親の介護が必要になった時に慌てないため、いつ頃から考えはじめ、どのような準備をしておけばよいのか。そして、その先に待つ自分の介護のためには、どれくらいの蓄えが必要なのか。今回は、年金や老後問題に詳しいファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに、介護に必要なお金とその考え方についてお聞きしました。

自分が50代になったら、親と自分の介護を意識する

介護は家庭ごとに事情が異なるため、いつ発生するか予想できないもの。井戸さんは親世代が元気な場合、子世代は「50代を目安に介護を意識する」ことがよいと語ります。

「子世代が50代なら、親世代は健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)が終わる75〜85歳くらいですよね。人によって異なりますが、85歳なら介護が必要になっている可能性があると考えられます。また、60〜65歳の定年から逆算すると、50代は残りの働く期間は10〜15年ほど。退職後の生活も考えはじめる時期でしょう。自分の退職金をどう使うのか、第二の人生で自分がやりたいことはなにかを考えた上で、親の介護とともに自分の介護にも目を向けることが望ましいですね」

エンディングノートを活用し、親の資産の棚卸しを

親の介護と自分の介護は個別に捉えず、表裏一体として捉えることが重要。とはいえ、多くの場合は先に発生するであろう親の介護に関して、具体的にはなにからはじめるべきなのでしょうか。

「親の資産の棚卸しです。金融資産はどれくらいあるのか、口座はいくつ持っているのか、冠婚葬祭互助会には加入しているのか、どのような保険に加入しているか、年金額はいくらくらいなのかなど、これらを棚卸しすることで介護に使えるお金が見えてきます。

先に述べた85歳を待たずして、介護が必要になることもあります。親が認知症になったり急逝したりして、はじめて実家に借金や売るに売れない土地などがあることを把握したというのもよく聞く話です。また、家族が把握していない口座があり、その口座に誰も気が付かなかった場合、休眠口座となってしまう可能性もあります。そういったリスクを減らすためにも、資産の棚卸しは大切なのです。

その際の簡単な手段として、エンディングノートの作成があります。これは、資産だけでなく、どういった介護や看取り、葬儀をしてほしいかなどを事前に書き記すノートです。生前にご両親の希望を聞いておくことで、納得感のある見送りがしやすくなります。」

介護は、一生のうちに何度も経験することではありません。いざとなったときに焦らないためにも、エンディングノートの作成や資産の棚卸しといった準備をし、いつでも対応できるよう備えておくことが大切です。

井戸美枝さん

介護に必要なお金は、50代のうちから準備を

エンディングノートで親の資産の棚卸しをしたら、実際に介護に使えるお金はどの程度あるのかが見えてくるはずです。介護における金銭面の負担は精神的な負担にも通じるため、その場その時の“点”で考えず、先を見越した“線”で考えることが重要だと井戸さんは語ります。とはいえ、人それぞれ年金受給額には差があるもの。介護のための預貯金も、漠然と多額の費用が必要という認識を持たれている方が多いのではないでしょうか。そこで、調査データを基に、介護に必要な金額の目安を教えてもらいました。

「2015年に生命保険文化センターが行なった調査を基にすると、1人当たりの介護費用は約500万円とされています。介護の平均期間が4年11ヵ月。公的介護保険で賄えない費用が月8万円程度。介護リフォーム費用などの平均が80万円で、全てを足した額が約500万円とされていますね(※)。私はここに、医療費も足した方がいいと思うので、合計で約800万円があると安心だとアドバイスしています。この額を、生活費や老後資金とは別に、75歳までに介護費用として準備しておくイメージです。」

そして、親の介護と自分の介護は表裏一体と話す理由はここにあります。

「親の介護と向き合うことで、結果として自分が介護される時の準備にも向き合うことになるのです。自分の介護費用を800万円用意するのは大変だと感じるかもしれませんが、50歳から25年かけて貯めようとすれば、年間32万円。50代から子どもの教育費や家のローンが減り、貯めやすいステージになる方も多いので、非現実的な金額ではないと思います」

親の資産が足りなければ、民間介護保険を活用

では、資産の棚卸しをした結果、もし親が十分な資産を持っていなかった場合はどうしたらいいでしょうか。

「親の介護費用を捻出するには、年金と公的介護保険を上手く利用しましょう。親にも子世代にもお金がない場合、介護に専念するため子世代が離職するケースは多いですが、介護が終わり親を看取ったあと、再就職しようと思ってもそう簡単ではありません。家庭ごとに事情が異なるので一概に介護離職は絶対にダメとは言えませんが、よほどの事情のない限りは、親の年金と公的介護保険を上手く利用しながらやりくりすることをお勧めします。

また、最近は公的介護保険を補完する民間介護保険も出てきています。そういった保険を利用するのもいいでしょう。保険は貯蓄と違って、別の何かに使うことができない限定されたお金の使い方。非常に分かりやすいし、意味があると思います。
親世代の介護はいつはじまるかわかりません。生命保険会社の付帯サービスには、例えば認知症に関する相談窓口など、認知症になる前から活用できる付帯サービスもありますので、そういった意味でも、保険に入っていると安心です」

「孫はかすがい」? お金の話は視点を変えることも大事

介護の準備をするとはいえ、親子間で資産やお金にかかわる話はしづらいという家庭も少なくないはず。そうした場合にはどのように対応すればよいのでしょうか。

「家庭にもよりますが、意外にもお孫さんが潤滑油になることがあります。子どもが相続の話をすると生々しいけれど、お孫さんに教育資金を贈与するという話になれば、スムーズに進むことも多いですね。

日ごろからきちんとコミュニケーションし、ご両親の細やかな体調や、行動の変化に気を配っておくことはもちろんですが、親の希望をできるだけ叶えた老後、介護を実現したいからこそ、お金のことを知っておく必要がある、と伝えましょう。やはり素直に話すことが一番大切です。介護をはじめたはいいけれど、十分な準備がなければ、途中でお金が足りなくなる可能性もあります。そうならないためにも、ご両親の資産の全体像を把握したいと率直に伝えることが望ましいです」

親子の問題にせず、三世代で将来を見据えることで話をスムーズに進める。介護の準備に必要な資産やお金の整理には、視点を変えてみることが効果的ということですね。

最後に井戸さんは、実際に介護がはじまった際の工夫をアドバイスしてくれました。

「親の介護がはじまった場合、ご自身に兄弟姉妹がいるなら出納帳をつくるといいでしょう。介護用の口座をつくっておいて、許可を得たうえでそこから介護代や医療費などを引き出す。何に使ったかはしっかりと出納帳に記録しておく。これにより、介護にかかる費用と出入りが皆で把握できます」

井戸美枝さん

介護と向き合い明るく豊かな老後を目指す

印象的だったのは「女性は3回、介護と向き合う」という井戸さんの言葉。最初は親の介護。次に、平均寿命は男性よりも女性のほうが長いため発生する可能性が高い夫の介護。最後に自分の介護です。そういった意味で、介護を考える時には「介護する立場」と「介護される立場」といった2つの視点が必要といえます。

親の介護を見据えたときは、家族の資産を棚卸しして、見える化することが必要。介護を考えることは、これからのマネープランや保険を見直す大事な機会でもあるわけです。介護にいくらかかるのかを知り、介護にまわせる資産がどの程度あるのかを把握することで、お金の面では安心することができるでしょう。

公的介護保険や年金、そして貯蓄や民間介護保険を上手くやりくりすることで、金銭面の不安を減らし、大切な方とのコミュニケーションを日ごろからしっかり行っておくことで、明るく豊かな老後にしたいものです。

井戸美枝さん

<井戸美枝さんプロフィール>
社会保険労務士 ・ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一級FP技能士、産業カウンセラー、DCプランナー 発酵マイスター
神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。複雑なお金にかかわる動きをかんたんに読み解く経済エッセイスト。
1990年~社労士、1996年~CFPとして講演・相談業務・執筆業務に従事。
2004年9月~2009年12月社会保険事業運営評議会 委員
2013年10月~2019年1月社会保障審議企業年金部会 委員
2019年2月~社会保障審議会企業年金・個人年金部会 委員

※出典 (公財)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成27年度

*記載の情報は2020年9月10日時点のものです。
*取材対象者のコメント、内容は個人の見解です。

 

 
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