メットライフ生命「#老後を変える」編集部 2018.1.26

 

筋肉を若々しく保つことが、認知症予防につながる

最近、体を動かす運動器である筋肉や骨のアンチエイジングが重要視され始めています。今回は「骨」の健康維持についての記事と同様に、「筋肉」の健康に関して、予防医学とアンチエイジングに詳しい医師の阿保義久先生にお話を伺いました。

「少 し前から『ロコモティブシンドローム』という言葉が注目され始めました。略して『ロコモ』と呼びますが、『筋肉や骨、関節などの運動器の障害による移動機 能が低下した状態』を指します。移動機能が低下すると動けない状態になり、結果、抑うつが出たり、運動不足による認知症にもかかわってきたりします。ま た、その時に起きる精神面の虚弱のことを『フレイル』と言い、予防や支援が必要になっています」

近年、筋肉や骨など運動器の重要度が高くなってきたと阿保先生は言います。

このようなことから、体を動かす運動器である筋肉や骨のアンチエイジングが重要視され始めています。

 

阿保義久先生

 

「ロコモは物理的な部分、フレイルは内面的な部分でのトラブルです。ロコモが立てなくなる、歩けなくなるといった物理的な機能の低下である一方、フレイルは表情が非常に乏しくなる、社会的な行動ができなくなるなど心理面での低下です。
ま た、加齢に伴う筋量の低下のことをサルコペニアと言います。筋肉量はよほど意識しないと40代くらいからジワジワと落ち、60代以降はストンと急激に降 下。若年時より20~30%低下し、質的にも下がります。サルコペニアはロコモやフレイルを引き起こし、老後の豊かな生活に支障をきたします。そのため、 老化防止には筋肉を保つことが大事になってくるでしょう。老後を豊かに生きるために必須ですね」

このように阿保先生は、筋肉の重要性を強調します。しかも、運動しないことによって筋肉が使われなくなり、筋肉がどんどん萎縮していくのもよくないと続けます。

 

筋肉を動かすことが、脳を活性化させる

筋肉は私たちが考えている以上に、重要度が高いもののようです。
それはどうしてなのか、阿保先生に聞いてみました。

「筋肉は骨の周りについていることが多いのですが、骨がない部分、例えば汗が出る汗腺、目の周囲、心臓や腸など内臓臓器などにも筋肉があります。つまり、ほぼ全身に筋肉があるのです。
しかも、特徴的なのは、筋肉は脳と一体化しているものだということ。脳から神経が伸びて筋肉につながっています。筋肉は脳が興奮しないと動きません。だから、筋肉を動かすことで脳のトレーニングにもなるのです。
『脳まで筋肉』という言葉がありますが、筋肉と脳が一体化していることを考えるとあながち間違えでもなく、本質をついている表現とも言えますね」

筋肉を動かすことで脳が活性化するなら、認知症の予防や改善にも効果がありそうです。

「筋肉を若々しく保つことは、頭を若々しく保つことに直結します。ですから、認知症予防にも筋肉を動かすのはよいことなのです。
実は、医学部の専門課程に入って最初に勉強するのは他でもない『筋肉』です。どのような刺激が脳から神経に伝わり、筋肉をどのように動かすかという筋肉学から学び始めます。そのくらい筋肉は重要なのです」

最近、電気刺激で筋肉を刺激するトレーニング器具がはやっています。あの器具を使うのはどうなのでしょうか。 

「器具を使った場合、筋肉を無意識に動かすだけで、脳も神経も使われていないのです。筋肉を強化するのにはよくても、アンチエイジングを期待した筋肉トレーニングとしては適切ではないですね」

阿保先生は、実際に自分で筋肉を動かすことが大事だと言います。つまり脳を興奮させ脳細胞を活性化させて、神経を介して筋肉を動かすという一連の流れを意識するのが老化防止によさそうです。
簡単な有酸素運動であれば、時間・場所を選ばずにできるため手軽に始めることができます。

 

老後を健康に過ごすための、筋肉を鍛える食事と運動

それでは、筋肉を健康に保つための食事は、どのようなものがおすすめなのでしょうか。阿保先生に聞きました。

「筋肉を強化するには、基本的にはタンパク質が必要。タンパク質の中でもアミノ酸が大事で、肉、魚、卵、大豆などに含まれます。1日に必要なタンパク質の目安量は、次の式で出すことができます」

 

阿保先生がおすすめするタンパク質の摂取目安量 阿保先生がおすすめするタンパク質の摂取目安量

 

「例えば、体重60㎏の人であれば、1日に必要なアミノ酸摂取量は70~80g。
70gのアミノ酸はロース肉だと360g、鶏ささみで300g、マグロ刺身で250g。3食に分けて摂取するのが理想的です。食べ物に換算すると摂取量が多いので、意外と不足気味の方も多いかもしれません。
また、ビタミンDは筋肉の質を上げるのにも効果的なので、ビタミンDを意識して摂るようにするとよいです。
タンパク質としては魚の方が効率よく摂れ、ビタミンDを多く含みます。肉はビタミンB群を多く含むのがよい点です」

アミノ酸やビタミンDを多く含む食材を阿保先生に聞き、以下の表にまとめました。

 

阿保先生がおすすめする食材 阿保先生がおすすめする食材

 

阿保先生のご説明で、筋肉を健康に保つ食事や栄養素を教えていただきました。一つに偏らず、いろいろな食材からバランスよく摂取するのが大事だそうです。

「では、筋肉を守り、血管を守り、骨を守るキーワードは何だと思います? それは運動です。さらに、運動は頭を守ります」

そう阿保先生は言いきります。運動は認知症を予防するのにも重要な要素だとのことです。とはいえアスリートのような運動はできませんので、一般の人が日常的にできる運動としては、どのような方法がよいか聞いてみました。

「深 呼吸がおすすめです。この場合、吸うときよりも吐くときが重要。目安は、風船をふーっと膨らませるように吐ききるくらい。思いきり吐くと、肺の周囲の呼吸 筋(横隔膜、肋間筋)が鍛えられるのです。1日10回くらい深呼吸をすると、体内に酸素が巡るので、血液循環もよくなりますよ。また、かかとの上げ下げも よいです。立った状態でふくらはぎに意識を向けてかかとを上げて、地面にかかとを落とす……というのを20~30回繰り返します」

確かに、10回も深呼吸すると体がポカポカし、気分がリフレッシュします。かかとの上げ下げは電車の待ち時間でもできる手軽さがあります。これなら場所を取らないので簡単に続けられ、年配の方でも気軽に取り組めそうです。
筋肉の健康を維持するのは、日々の簡単な運動とバランスのよい食事。そんな小さな積み重ねで、豊かな老後へと備えていきましょう。

 

阿保義久先生

 

<阿保義久先生プロフィール>
青森県生まれ。北青山Dクリニック院長。東京大学医学部腫瘍外科・血管外科非常勤講師。
早 稲田大学理工学部に進学するが、在籍中に医師を生涯の職業にすると決意。東京大学理科三類(医学部医学科進学課程)を再受験する。医学部卒業後、東大医学 部附属病院第一外科、虎ノ門病院麻酔科などを経て、2000年北青山Dクリニックを設立。外科医としてのスキルを活かして「日帰り手術」「予防医学」「ア ンチエイジング」を3本柱に、質の高い医療サービスを提供し、トータルな健康管理をサポートしている。著書は『アンチ・エイジング革命』(講談社)など。

 

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Posted: January 26, 2018